豚キムチ丼つゆだく青年


..安キャプチャカード買いの銭失い..

「どうしてあんなに紅しょうが使うかなぁ?」

今思ってみれば、その日は少しイライラしていたかもしれない。
ほぼ満席に近い吉野家の店内は、ゆったりと食事できそうな席は空いていなかった。
いつもの座席には、荷物がでんと置いてあり、その横には高そうなスーツで身を固めた若いサラリーマンが、食べかけの牛焼肉丼をほったらかして携帯電話をいじっている。

すこしカチンときたが、あえて悶着を起こすこともないと、今さっき会計を済ませた客が出ていったために空いた席に滑り込む。

「これは、時間帯が悪かったかな?」

と空腹に負けて、思わず立ち寄ってしまった自分の意思の弱さをすこしうらむ。

注文を済ませ、豚丼大盛りにがっついていると、別の客の注文が耳に飛び込んでくる。

「豚キムチ丼大盛りとみそ汁、つゆだくで」

すこしすました調子のその注文にギョッとして、その注文主の顔を確認した。
貧乏そうな青年だった。なんとなくだが、東北の出身だと自分の中で断定する。
これはおそらく、いや100%、私の偏見だ。脳がこれまで私が出会った人物のデータベースから、類似した人物のキャラクタ属性を一時的に割り当ててしまうのだろう。そんな私の脳内のルーチンワークよりも、問題の青年だ。
案の定、紅しょうがの箱に手を伸ばしている。

「そもそも豚丼のつゆだくって…」
「あのつゆはそんなに味わい深いもんじゃないぞ、急造だし。わかってんのかな?惰性でつゆだくっていってないかな?」
「そもそも、あの注文だと、キムチの汁をたくさんとかみそ汁大盛りって意味にもとれるんじゃ…」

と、いろいろな思いが頭の中をぐるぐる回る。
私は自分のそばで「つゆだく」の注文をされると、気分が悪くなる。なぜなら、彼らはきっと「受けられるサービスは受けたほうが《お得》」と思ってるだけで、つゆの滴るこってりご飯を食べたいと思っているのではないのでは?と思えるから。

「浅ましい…」

って思う。豚丼くらいで心が狭いと自分でも思うが、たかが豚丼で殺される可能性もなくはないこの時代、それくらいの考察を持って吉野屋に入らないと、どんなトラブルに巻き込まれるかわかったものではない。

実際に先ほどの青年は、紅しょうがを豚肉が隠れるほど盛り付け、その上から七味をたんまりとふりかけている。それでおいしいのか?それとも、「そもそもおいしくないけど食べなくちゃならないから、人よりちょっと得しよう、その満足感を満腹感にすりかえちゃおう作戦」なのか?それを見せられるこっちの身にもなってほしいものだ。

「ただでさえ、モチベーションアップ効果が牛焼肉丼とくらべて低いのに、これじゃさらにモチベーションが下がって、食事効果の意味がほとんどなくってしまうよ。」

と思っていると、後から入ってきたタクシーの運転手らしき中年紳士が注文をした。

「豚丼と卵。あ、つゆ多めで」

こちらは通な注文だ。
卵マターでつゆを多めにチューニングってことっすよね。わかるなぁ、わかる。残念ながら、もう会計するのでその食事の様を拝見することはかなわないが、私はちょっとだけ気持ちを持ち直して吉野家を出た。
今にも雪を落としてきそうな雲が、空全体をおおっていた。

※書きはじめを変えてみたらなんかへんな中途半端な記事に…。

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おもろないいまいちだふつう…だまあまあだおもしろい (未評価)
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